19〜20歳の頃、私は医学部を目指す浪人生でした。
優秀な生徒ばかりの高校で、予備校で、自分の力の無さを痛いほど感じていながらも
それでも最難関とも言われる医学部に入りたいと思っていた頃の話。
全力で勉強しても勉強しても
医学部合格圏内には届かなかった。
その時に、よく日野原先生の著作にあった話を思い出していました。
ある高校の卒業式での日野原先生の講演です。(かなり端折っています。)
既に目標としている大学に合格して、希望に満ち溢れている人たちではなく、
大学受験に失敗し、卒業式に出るのさえイヤだと思っている人たちに、特に申し上げたい。
失敗すると、同じような経験をした人の気持ちがわかるようになる。
そして友だちになることができる。
人の気持ちがわからないまま、ストレートに進んでいくのとどちらがいいでしょう。
私は医大に入ったときに、誰よりも早く学位を取ろうと思っていた。
しかし、結核にかかり、長期の療養を余儀なくされた。
絶望していた。
でも、そのおかげで、病気に苦しむ人の気持ちがわかるようになった。
…
このエピソードに私はとても支えられ、
ストレートに人生を歩めない自分を肯定できるようになりました。
結果、浪人の末、医学部には合格できずに、私は薬学部に進むことになります。
薬剤師として働いていたときも、直接患者とは接しないけれど、薬の仕事をしている今も
薬の向こうには、必ず患者がいるということを常に念頭に置いています。
今年の春、娘が右腕を骨折しました。
箸がうまく持てない、鉛筆で書けない、着替えがうまくできない、
運動会はダメ…
いろんなことがショックで、イライラしている娘に話すことは、
ここでも日野原先生の話でした。
日野原先生っていう立派なお医者さんがいてね、その人のお話。
自分が結核という病気に苦しんだ経験のおかげで、
患者さんの気持ちがわかるようになれたって言ってたよ。
骨折してしまったけど、これから、同じようにけがをしたり骨折した子の気持ちがわかるようになって、
助けてあげられるよ。
今はそう思えなくても、必ずいい経験になるから。
日野原先生。挫折を乗り越える力を与えてくださり、ありがとうございました。
娘が10歳になったときに、先生の本「10歳の君へ」を娘に渡しました。
命とは時間。
自分の時間、命をできるだけ人のために使う。
それができているか、私自身も自問しながら生きようと思います。
ご冥福をお祈りします。
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